秒太郎という名前は、まだ検索しても出てこない。

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勝手に考えたことを勝手に作る。ずいぶんと勝手な仕事を普段はしてるけど、ちゃんと依頼されてから考えることも嫌いじゃない。これはシチズンから頼まれた原稿に書こうと思って、やっぱり書かなかったエピソード。AR三兄弟のことを古くからサポートしてくれている人物から、男の子の名前を頼まれたときの話。

「ほんとは十夢って名前をもらいたいくらいだけど、それは恐れ多い。長男に新しい名前を考えてほしい。○○太郎っていうのがいい」、飲んでる席で頼まれた。夜をひとつ挟んで、「秒太郎はどうか?」と返答した。検索しても出てこない名前のほうがいいに決まっている。勝手にそう思った。秒太郎は検索しても出てこない名前だった。しかし、果たして本人にとってそれは幸せなことだろうか。返答したものの、また悩みはじめた。他にないということは、単一である。単一であるということはユニークでなければならない。個性の時代が終わって久しい現代において、秒太郎という名前の十字架を背負わせてしまっていいものか。僕も名前で最初期は苦労した。悩んだ挙句、検索して数人でてくる「瞬太郎はどうか?」とあらためて打診した。結果的に、その子の名前は光太郎になった。僕が出した時間感覚がヒントになったらしい。子供の人生をこれから見守ってゆく二人が選んだ名前なのだから、ベストな選択であったと思う。

いまの僕はというと、『ワープする路面電車』という常設展示の新ネタの準備をしている。商業施設の通路であるはずの何でもない場所が、一瞬にして駅に変わる。やがて電車が到着する。路面電車の行き先は、すでにあなたが決めている。来ると決まってから、時刻表に時間が表示される。来ないかも知れない電車を駅ではないかも知れない場所で待つような人生だから、こんなものをまた勝手に作ってしまう。

秒太郎という名前は、まだ検索しても出てこない。使いたいお父さんお母さんいたら、ぜひ命名ください。やっぱり凄くいい名前だと思います。

wired.jp