一度見、二度見、シド・ミード。

「目の前を、おおきな風船がとんでいます。どう思いますか?」

 

見ず知らずの女の子が、雑な問題を出してきた。すぐに夢だと理解したが、輪郭が薄くなって目が覚めるまでは付き合ってやることにした。

 

「色は何色?」

「決めていいよ」

「じゃ、たとえば黄色い大きな風船が飛んでてそれを見たら、不安になる。」

「どうして?」

「だって、風船が浮くということはこの辺りにある空気みたいに安全な気体じゃないから。熱の近くまで飛んでいってしまうと爆発してしまうかも知れないだろ?」

「へー、大人ってすぐそうやって不安がるのね。」

「あと、黄色は危険察知に最適な色でもあるし。」

「そんなの、思ったときない。つまんない。」

「いや、だってこれ夢だからさ。夢の中で夢みたいなこと言うほどつまらないことないでしょ。」

「外のことはわからない。」

「現実には、危険だ不安だって大人が満載だからさ。同じことを向こうで聞かれてたら、紐がついているか確認して、つかまって、飛べるところまで飛んでゆきたいとか、重いものを軽くする浮かれた言い方を探すよ。」

「答えをもとめられる場所によって、意見をかえるということ?」

「いや、それは違う。意見は変えない。答え方は変わる。時間と空間によって、響き方とか伝わり方が、違ってくる。」

「大人ってたいへんね。」

「いや、僕は君ぐらいの年から、ずっとこうだよ。」

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 言いたいことを言ったら、目が覚めた。シド・ミードに関する原稿の締め切りと文献が横たわっていた。黄色い風船を探したけど、もうなかった。