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ビルのゲーツのビジターのパスを、持って帰ってきてしまった。

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ヨーロッパ企画。新作の『ビルのゲーツ』が各紙各所で大絶賛。友人として嬉しい、半分は悔しい。「意味とかじゃない」「そういうの要らない」何気ない台詞の中に、劇団が貫いてきた姿勢が示されていた。つまらない批評を寄せつけないユーモアの存在に、また新しく気づかされた。

二回の観劇を終えて、昨晩はアフタートークに出演した。さっきまで舞台に上がっていた役者(石田剛太さん、永野宗典さん、諏訪雅さん)、あの舞台を作り上げた作家(上田誠さん)と一緒に、ビルのゲーツを通ってお客さんの前に出た。いつになく緊張した。劇の構成が複雑になり過ぎないための苦心だとか、横山裕一に於ける『NIWA』の話だとか、フロア設定の順番工学だとか、作・演出・開発をした舞台『パターン』の話とか、しようと思ったけど、お客さんは、表のビルのゲーツの話を聞きたいだろうなと、セーブした。

ビルのゲーツのビジターのパスを、持って帰ってきてしまった。よくやってしまうことなのだが、このパスは特別である。再び幕が開くその前に、劇場へ返しにゆかなくちゃ。

あの人の一部は映画でできている

7月4日、タイトルと同名のイベントに出演し、「紹介しきれなかったものも含めて、プレイリストにして公開しまーす!」とお別れの言葉を残したきり、多忙に任せてうっかりそのままでした。約束通り、公開します。

Q1:初めて映画館で観た映画、初めて泣いた映画は何ですか?
A1:ET(1982年公開)



当時5才。自転車が陸から離れるシーンに感動。大人VS子供の図式がよかった。いつかETに会いたいと思っていたら、学生のときに半分仕事で訪れた(オープン前の)USJのETアドベンチャーにて再会。入場時に何度も名前(十夢/とむ)を大阪弁で聞き返されて変に思っていたら、アトラクションのアトラクションで、ETが手を振って自分の名前を呼んでくれるという感動のおまけ付きだった。前の方のお客さんから順番に名前を呼ばれてゆき、ついに僕の番。ETは大きな声で「トメ〜」と僕を名前を呼んだ。おばあちゃんじゃあるまいし。露骨に落胆した。 


この映画の影響で、赤いパーカーばかり子供の頃は着ていた。大人になって「赤パーカー」なる男がインターネットに登場して、微笑ましかった。 



Q2:初めてお小遣いで観た映画は何ですか?
A2:ゴーストバスターズ(1984年)

ベチョベチョになるビル・マーレー:このシーンがあることで、ゴーストの触り心地が観客に伝わる。凄い、触覚の拡張だと思った。 


三人いると何となくおもしろくなる: 同じ格好をしているだけで、おもしろくなる。 


ゲーム化の難しさ:映画があんなにおもしろかったんだから、ゲームがつまらない訳がない。と思って、何人の少年たちがこのゲームを買ったことか。。



なんか怪しいレイ・パーカー・ジュニア: このミュージックビデオを最初に見たとき、なんか怪しいと思った。少年の勘が正しいかったかどうかは、バック・トゥ・ザ・フューチャーに続く。 


Q3:人生観に影響を及ぼしたほどインパクトのある映画はありますか?
A3:あります。4本あります。

A3-1)バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985/1989/1990)

Nike Air 2015 Kicks



Hill Valley 2015
 



Hover Board
 

 
ブルーレイのボックスセットについてた解説本で、ロバート・ゼメキス監督がこの映画の着想について語っていた。確か、こんな内容だった。「テクノロジー満載の映画だけど、人間を描けばわかってもらえるものになると確信していた。例えば、お父さんやお母さんが聞かされた子供の頃の苦労話。これを本当に自分で確かめることが出来たら、おもしろくなるとは思いませんか?」 この映画に描かれた未来は2015年のことで、もう来年の話。

MVが拡張現実っぽい


ヒューイ・ルイス、審査員役でうっかり出演


ゴーストバスターズ VS BTTF 代理戦争勃発


ゴーストバスターズの主題歌は、バック・トゥ・ザ・フィーチャーのテーマ曲を書いたヒューイ・ルイスのアルバム曲の丸パクりだった。のちに裁判沙汰になるのだが、これは流石に酷いと思った。現象をパクっちゃいけないと思った。 勘が当たった。

A3-2)グーニーズ(1985)
自らの発明で苦難を乗り越えるデータの活躍が、他人事じゃなかった。グーニーズのゲーム化は成功だった。

A3-3)ガープの世界(1982公開/1985鑑賞)



原作も映画も大好き。ジョージ・ロイ・ヒル監督凄い。特に好きなのが、魔法の手袋のシーン。道ばたに落ちていたゴミ同然の手袋からだって、作家は物語を作ることができる。喜劇は悲劇に、悲劇は喜劇にできる。誰かが「言っていいこと」にしたことを、みんなの「そうだそうだ」に同調するのは容易。作家の仕事じゃない。つまり、僕の仕事じゃない。子供ながらに覚悟した。 


A3-4)のび太の魔界大冒険(1984)
魔法と科学。出来杉くんによるリアルな魔法談話。魔法の世界のコマーシャル。たのしいまほう しょうがく1。科学という迷信。のび太が唯一覚えた魔法。

<<中略>>

Q5:好きな映画監督は?
A5:テリー・ギリアムモンティ・パイソン)、ウディ・アレンスパイク・ジョーンズミシェル・ゴンドリーなど 

テリー・ギリアムについて
未来世紀ブラジル夢の中に出てくる女性と、現実に出会ってしまう。わりと近い感覚ある。フネレルレンズの使い方とか、テレビモニターの丸っこい感じとか、好き。 



フィッシャー・キングガープの世界で、けして結ばれることのなかったエレン・ジェイムズ役の女性と、この映画で結ばれる。最もロマンティックな拡張現実のひとつだと思っている。 



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ロビン・ウィリアムズのご冥福を、心よりお祈りいたします。

作家とは、かっこいい生き物なんだ。

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筒井康隆。今年で80歳を迎える。自ら「作家としての遺言」と銘打った最新著作の刊行記念イベントが、さきごろ講談社で行われた。参加フォームに、筒井康隆への質問状という欄があったので、実名とともに書いておいた。それは、いつか筒井さんに会うことができたら、直接聞こうと思っていたこと。イベントの体裁としてはペンネームでもよかったのだが、ここは実名でないといけない気がした。

イベントは、冒頭に簡単な挨拶があったあと、質問にいくつか答えて、朗読を最後に一編という構成だった。創作の極意と掟は、時代とともに変遷するのか。小説の源流はどこにあるのか。ロゴスは存在するのか。星新一小松左京半村良らのSF作家と同時代を生きて、どんな極意を学んだか。など、いくつかの質問に答えたあと、不意に僕の名前と質問が読み上げられた。

質問:何か小説になりそうな題材をみつけたとして、それが最終的に小説になると確信するのはどんな瞬間ですか?(川田十夢

椅子から飛び上がりそうになった。考えてみれば、こうして客席にいながらにして質問状を読み上げられるのは初めての経験だった。筒井康隆は、こう答えてくれた。

返答:着想が小説になり得るかどうかは、文学的な蓄積によってのみ判断できる。題材が自分にむいているかどうか、その蓄積から判断できる。逆に、これは小説になり得ないのでは?というものを、えいっと書いてしまうこともある。だが、責任は作家が取らなくてはいけない。(筒井康隆

予想していた答えとは、少し違っていた。でも、その真意は受け取ることができた。筒井康隆は、誰も書いたことがないものを書いてきた作家だ。あらゆる作家が手段として選んできた文章読本越しの文体肯定も、いままでしてこなかった。それを最後の長編小説、聖痕を書き上げたあとに、こうして遺言として発表しているのは、つまりそういうことだ。何を書くかではなく、どう書くかが問題なのだ。

筒井康隆は、最後に自らの短編を、自らの声で読み上げた。壊れかた指南に収録されている鬼仏交替。1分ごとに気分が変わってしまう奇病を患った男の話。仏のような表情だったのが一変、鬼の形相に変わる。眼前の人間に罵詈雑言を捲し立てる。その声色の変化を、筒井康隆が自らのタイミングで与える。読み上げる。これが、見事だった。満場の拍手に見送られながら、筒井康隆は会場をあとにした。なんてかっこいい去り際なんだ。作家は、かっこいい生き物だ。生き方ではない、生き物なんだ。町田康の朗読を聞いたときも、同じことを感じた。町田は自分を構成する重要な作家として筒井康隆の名前を挙げ、夜を走るという小説を読み上げた。まるで、自分の作品のように。捲し立てるように。

帰り際に購入したサイン本の帯には、町田康の名前があった。伊坂幸太郎の名前もあった。僕の名前は、まだ無かった。

使わないでとっておいた古い切符で、夏。

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十代後半の僕には、ひとつ決まり事があった。大好きな寅さんに足元から近づくために、毎年毎年柴又の履物屋さんまで出かけて、新しい雪駄を購入する。ニューモデルと称して、一年間履き続ける。それがある日、不意に破られた。買ったばかりの雪駄の鼻緒が突然切れたのだ。露骨に嫌な予感がした。

寅さんが亡くなっていた。訃報は三日遅れで公のものとなった。松竹の発表では「寅さんの愛称で親しまれた渥美清さん」となっていたが、僕にとっては他でもない。寅さんを、かけがえのない人を、失った。

丸一日呆然としたあと、ふらふらと帝釈天へ向かった。境内には寅さんを偲ぶおじいちゃんおばあちゃんが大行列をなしていた。なんとなく並んでいると、すぐ後ろのおばあちゃんが、数珠をジャラジャラ言わせて僕を拝んでいた。娘らしきおばさんが「すいません。ほら、おばあちゃん。こちらは寅さんじゃないのよ。拝んじゃ駄目よ。」久しぶりに笑った。とたんに、気持ちが楽になった。列をおばあちゃんに譲って、帝釈天をあとにした。柴又から出てる京成金町線の切符を買ったけど、使わないで大切にとっておくことにした。次の中継駅まで歩きながら、考えた。悲しみに暮れる孤独について、寄り添うように生じるユーモアの存在について、十九の夏だった。

寅さんと僕の話は、話せば長くなる。長くなるから、簡単には口に出してこなかった。時は来た。大好きな寅さん。ユーモアの原点。原宿シネマで、お待ちしております。

原宿シネマ 
http://www.harajukucinema.com/movie/tra2014_01.html

一度見、二度見、シド・ミード。

「目の前を、おおきな風船がとんでいます。どう思いますか?」

 

見ず知らずの女の子が、雑な問題を出してきた。すぐに夢だと理解したが、輪郭が薄くなって目が覚めるまでは付き合ってやることにした。

 

「色は何色?」

「決めていいよ」

「じゃ、たとえば黄色い大きな風船が飛んでてそれを見たら、不安になる。」

「どうして?」

「だって、風船が浮くということはこの辺りにある空気みたいに安全な気体じゃないから。熱の近くまで飛んでいってしまうと爆発してしまうかも知れないだろ?」

「へー、大人ってすぐそうやって不安がるのね。」

「あと、黄色は危険察知に最適な色でもあるし。」

「そんなの、思ったときない。つまんない。」

「いや、だってこれ夢だからさ。夢の中で夢みたいなこと言うほどつまらないことないでしょ。」

「外のことはわからない。」

「現実には、危険だ不安だって大人が満載だからさ。同じことを向こうで聞かれてたら、紐がついているか確認して、つかまって、飛べるところまで飛んでゆきたいとか、重いものを軽くする浮かれた言い方を探すよ。」

「答えをもとめられる場所によって、意見をかえるということ?」

「いや、それは違う。意見は変えない。答え方は変わる。時間と空間によって、響き方とか伝わり方が、違ってくる。」

「大人ってたいへんね。」

「いや、僕は君ぐらいの年から、ずっとこうだよ。」

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 言いたいことを言ったら、目が覚めた。シド・ミードに関する原稿の締め切りと文献が横たわっていた。黄色い風船を探したけど、もうなかった。

時間も磁力で戻せればいいのに。

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磁石について調べていたら、残磁現象という言葉と出会った。物質に磁性が残ってしまう現象のことなのだが、これを消す方法が三つあるらしい。交流を流したコイル内を通過させる、交番磁界を当てる、再結晶温度まで加熱する。最初の方法が最も一般的で、簡易的に適える消磁器という道具があることもわかった。使用上の注意には、こう書いてある。


「使用方法を誤りますと逆に磁化してしまう場合があります。」

人間にも「シビれる」という慣用句があるが、シビれたあとの感覚が磁性のように残ることがある。残ってしまった場合には、対象の虜になり続けるしかないと考えていた。でも、残磁現象として考えると、三つの方法で消すことができる。コイル内を通過するとは、即ち経験の輪をくぐり抜けること。交番磁界を当てるとは、新しい恋に落ちること。再結晶温度まで加熱するとは、輪廻まで待つこと。そんなことを考えているうちに、時計の針は14時47分を回った。時間も磁力で戻せればいいのに。

2010年9月から、2013年10月まで。フイナムブログに書いたこと。

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フイナムがはてなブログ連動になりました。古い記事とのリンクがいったん切れてしまうということだったので、とりあえず過去の記事をまとめておきました。無機質な抜粋ですが、一応、時系列になっています。

 

2011年

"考えてみれば、役者はプレイヤーであり、インターフェイスでもあります。ユーザーであるところのお客さんに最も近い位置にいる。もしかしたら、難しいテーマをしっかりおもしろく伝えることが出来るのは、その言葉選びをできるのは役者なのかも知れない。"

「ものを作らなソンやと思わへん?」から始まる「虚業」について  2011.01.22

 

"精神病を患っていた人が、癌レベルの重い病気を患って、うっかり精神病が治ることがあるのですが、僕は花粉症を患うことで、一人で何も考えずボーっと何かを見たり考えたりする余白を与えられた気がします。

"花粉症と僕。 2011.02.27

 

"ホワイトバンド、かんぴょうだったら良かったのに。

"ユーモアの拡張について  2011.03.21 

 

"不純物の対義語はないらしい。不純だ"

どついたるねんのデビューアルバムが出ました。2011.06.08

 

"プロトコルとは何か、簡単に説明すると、それは通信する上での約束事です。電話するにも、メールするにも、検索するにも、プロトコルは必要です。逆に言うと、プロトコルのあるものとは通信することができる。僕は、映画という装置にプロトコルを与えることで、物語の向こうと現実をつなげられないかと考えました。"

「映画」から始まる「プロトコル」について  2011.07.01

 

"物語りシロとは何か。物語を参照している人がその物語について語りたくなる入口から出口までの面積です。"

空間と物語の関係性とミシンと発明家について。2011.07.22

 

"転々と転職を繰り返したあと、AR三兄弟という職を自ら作ってはたらいている。"

「無職」から始まる「転職」について  2011.08.04

 

"ある時代における翻訳家というのは、同時にコピーライターとしての役割も担っていた。"

「本末」から始まる「転倒」について  2011.08.16

 

"僕はいま、縦に進むべくボタンを押している。横になったままなので、うっかり横に進んでしまうのかも知れない。"

「縦」「縦」「横」「横」から始まる「縦」について 2011.08.18


2012年

"まとめサービスが人気ですね。まとまりのなさがインターネットの面白いところですが、それをまとめることで分類・整理・整頓しようとする動きは、原理的な知識欲求に回帰しているようでもあり、編集者としての視点を養うようでもあり、編集者という仕事を脅かすようでもあり。"

まとまりのない話をまとめる話。2012.02.02

 

"何度でも言います。ファッションは、浮ついた存在であって欲しい。僕は浮ついた気持ちで、それをカタチにします。"

ファッションは、浮ついた存在であって欲しい。 2012.04.06

 

"二度寝三度寝繰り返すたび、夢の色は薄れてゆく。それは疲労の色かも知れない。休んでいるうちに点滴の味を思い出した。ポカリスエットを薄くしたような味だった。"

休日からはじまる点滴の味について

 

"法人格から人格が伝わってこないように、法に触れたものは片っ端から感情を失ってゆく。"

逃亡と生活とダイエット、要するに流行について考える。2012.06.05

 

"パジャマを着て、町へ出た。それはまるで夢だった。夢の住人は、僕に注目するそぶりもなく、日常をただ淡々と過ごしていた。そこで僕は、幽霊のようだった。幽霊のように、ただ彼らの生活を観察した。"

パジャマを着てよ、町へ出よう  2012.06.12

 

"プロフェッショナルだからできる本質残しの引き算。子供に難解を容易にするシンプル設計。どうぶつディフォルメ。子供と大人が垣根なく一緒になって遊べる。全てが完璧ではないか。"

山田を軸にして考える、どうぶつしょうぎについて。2012.06.13

 

"未来から教師を探す必要があります。どの本屋にいっても、学校にいっても、しっくり来ないあなた。年下の声に耳を傾け、友人をつくって、その中から教師を見つけてみてはいかがでしょうか?"

年下の友人は、未来から来た教師である。 2012.06.23

 

"劇作家の個性というのは、起承転結の時間配分だし、構成能力だし、破壊力だなとも思いました。"

上田を軸にして考える、プライマリースクール・ウォーズについて。 2012.07.04

 

"そして場面はいよいよ夏希のおばあちゃんの栄が亡くなって家族が悲しみに打ちひしがれているシーンへ。事もあろうか、このとても大切なシーンで、ずけずけとクイズへの誘導のテロップが表示されたのです。これは最もやってはいけないことだと、心から思いました。"

サマーウォーズを軸にして考える、JoinTVについて。 2012.07.21

 

"未来を先んじて可視化することは、とても勇気のいることだ。間違っているかも知れないことに、多くの人のお金と期待を背負う。そこには大きな責任がともなう。"

未来を可視化してくれる人は、やっぱり偉大だ。 2012.08.02

 

"手紙を書いた人が自分の声でそれを読み上げる。それが手紙に添付できるって、とてもいいことですね。"

次男にはじめて手紙を書きました。三男からはじめて手紙をもらいました。2012.08.06

 

"たとえば、好きな小説は何度も繰り返し読む。物語の中の時間は変わらない。自分は年を取る。視点と焦点が、以前読んだときと違う。分からなかったことが分かる。分かってたことが分からなくなる。メディアというものは、それを取り巻くテクノロジーというものは、こういう情感めいた根拠に対して寛容でなければならない。"

ジオメディアを研究するまえに、土地の力を知ろう。2012.08.10


"やがて実家を出るとき、親はこれまで大切に撮り貯めてくれたであろうアルバムを、簡単にもっていけという。子供にも代わりに渡すものがあればもらってゆくが、何もない。簡単にもらえない。「要らないよ」って、少し強く言ってしまう。"

子供に写真を撮ってもらいました。2012.08.26

 

"たとえば、鞄を新しくします。いままで使っていた鞄に入っていたものの中で、必要なものだけを新しい鞄へ移します。これによって生まれた余白には、新しい生活で必要となる道具を与えます。ちょっとした旅行気分が不意にやってきます。"

旅の発明、それは日常を旅みたいにする道具の発明。2012.09.20

 

"今朝起きたら眼鏡が枕元にありませんでした。いろいろ探して、結局あったのは冷蔵庫の中でした。キンキンに冷えた眼鏡をつけた僕は、いつもよりも冷ややかな目でインターネットを見つめました。"

AR三兄弟を軸にして考える、パロディとセルフパロディの違いについて。2012.10.04

 

"コピーのコピーのコピーでやっと商売になるんだみたいな、つまらない物言いを身体がおぼえる前に、自分自身で劣化しないコピーの仕組みを作っておくことにした。"

平場に立ち続けるということ。2012.10.13

 

"指揮者というのは、映画監督とは違う。指揮をしながらにして、楽団全員の感情を背負って、自らが役者のように振る舞いながら、音楽に血脈を与えている。それは、観客の感情の起伏をも受け入れ、会場まるごと指揮することでもある。音楽に命を与えることであるし、奪うことでもある。"

指揮者が指揮しているものは、何か。2012.10.25

 

"雨の日の公園は、美しい。それだけ書かれたメモを読み返して、思い出した。そう、僕は雨の日の公園が好きだった。弱きもの、でも正しいもの。その他愛もない想像を宿せる公園が、この世でいちばん美しいと思った。それを、思い出した。"

雨の日の公園は、美しい。2012.11.10

 

"これ以上の説明は省きます。ユーモアは本来、説明するものではないからです。"

軽いものを重く見せようとする人にも、重いものを軽く見せようとする人にも、ブランドの概念がある。  2012.12.30



2013年

"やがてエンジニアとして出世する息子を、美輪明宏は歌いながら演じきっていました。それは、小手先の技術によるAR(拡張現実)なんかよりも、はるかに拡張現実と呼べるものでした。"

AR以前の拡張現実、ネット以前の双方向、過去につながる未来のこと。2013.01.02

 

"この残響音を頼りに、彼の怒りは何だったのかとぼんやり逆算していた。答えがわかった。"

小籔千豊の「イキるな」は、セルフブランディングの終了宣言だと解釈しています。2013.02.27

 

"道路標識の裏。目もくれず、矢印に沿って同じ方向をめざす人々。1mmの関心を寄せてもらえないものの存在。エスカレートする切実。どうすれば伝わるかなんて、考える余地はない。"

見過ごされまいとする異形のグラフティ 2013.03.04

 

"「自分ならこうする」は、あらゆる場面で持っておくべきだ。その「自分ならこうする」を、チャーミングに見せるべきだ。"

佐藤可士和がデザインしているものについて 2013.03.09

 

"僕のアイデアは、全部パクっていい。"

十年ぶりに、特許事務所に行って来た。 2013.03.29

 

"仮説が浮かんだ。ファンタジーの対義語は、グロテスクではないか。"
ファンタジーの対義語って、何だろう 2013.04.01


"絵本には、読み聞かせてくれる大人との時間と関係性が、すべて入っている。"
絵本と視線のお話  2013.04.02


"細切れになった現代の時間には、「→」(矢印)が常に存在している。それは、乗車している乗り物が向かう方角かも知れないし、進行方向から導かれる気分かも知れない。"
「→」の話 2013.04.19


エレファントカシマシが、生活というタイトルのアルバムを出したことがある。全く生活感のない、でも本当の生活について歌ったアルバムだ。
虚構のような生活、生活のような虚構。2013.04.27


"好きなバンドの話なんかもした。たまのファンクラブに入っていたとか、モールスが好きだとか。誰もが友人になる相手と最初にする、他愛もない話だ。"
まだ歌われていない世界のことを、彼は確かに歌った。2013.04.28


"顔を持つこと、隠すこと。表情を持つこと、保つこと。意識の玄関を持つこと、鍵を閉め忘れること。現実とは別に時計を持つこと。言葉を書き残すということ。"

言葉を書き残すということ。 2013.05.18

 

"国内旅行者と海外旅行者。求める質が異なるものの、旅行者であることは変わらない。日常会話では辿り着かない境地に、もれなく連れてゆかなくてはならない。チケットを購入して足を運ぶ映画の観客も、栞をはさんでまた同じ場所に来てくれる小説の読者も、同じ。小説を映画に翻訳する、映画を小説に翻訳する。プログラムビューでここを直せば、デザインビューのここが直る。"

観客のことを、意識の旅行者だと捉えてみる。2013.10.07


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フイナムは、ファッションに関する記事が多い媒体なのですが、そういう中にあって意識の塊のような文章を書き残すこと。わりと気に入っています。また不意に何か書き残すのだと思います。みなさま、よいお年を。